笹倉ブログ 2024.06.30
おうちのはなし 2023.12.09
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2023.12.09
おうちのはなし
家を新築するのにも、リフォームするのにも、現場で働く職人がいなければ工事は進みません。どんなにインターネットや情報技術が進んで世界中の資材を集めることができたとしても、手を動かす人が必要です。工事が進むまで、あまり触れ合う機会も少ない地味な人たちですが、職人の技と心意気によって家は支えられているのです。
2019年に施行された「働き方改革」により、多くの業界が転換期を迎えています。生産性が高く安全な環境下にある労働を目指して、改革が進められることは誰もが望むことであるはずです。
その中、2024年問題のニュースが多く流れています。ドライバーの時間外労働の上限が規制されることで、運転手不足が一気に表面化しています。
特に高速道路代金も安い深夜に走ることが多い長距離トラックの稼働条件が厳しくなると、新しい人材を確保しない限り現状の運輸を担うことができません。
また、一般企業よりも早い時間から動き終電まで稼働する公共交通も、基本は人材によって支えられているものです。人が足りなければ、減便を実施するしかありません。働き方改革は社会インフラに大きな影響を与えようとしています。
運輸業だけではなく、他の社会インフラともいえる業種にも話題は広がっています。コロナ禍でも大きな負担を背負った医療業界や、義務教育の現場である教師の時間外労働についても、問題点ばかりが表出しているように見えます。じつは家を建てている建設業界も他人事で済むような話ではありません。
良い機会ですから、産業別の就業者数を調べてみましょう。
男女計で最も多いのは、卸売・小売業などの商店で働く人で、続いて工場に通っている製造業、そして医療・福祉で働く人たちが、それぞれ1千万人前後います。そして4番目には、人数は半減しますが建設業に携わる人がいます。運輸業は7番目、教育業は8番目です。
働き方改革では、女性の活躍や高齢者への期待も含まれていますが、男性の就業者数では建設業は3位、運輸業も4位となります。女性ドライバーは見かけるようにもなりましたが、重たい資材を扱うなどフィジカルな体力を必要とする建設現場では簡単に女性や高齢者の活躍を期待することもできません。
さらに、相応の技術の習得を必要とする建築現場の職人となるには時間もかかります。現実的に建設現場で働く職人の多くがすでに高齢化しているのも問題となっています。
2024年前後は法制上のポイントでもありますが、団塊の世代が後期高齢者になる時期とも重なります。後期高齢者になることを契機として、現場から引退する職人が一気に増えれば、ニュースになっている運輸や、医療、教育の業界よりも深刻な人材不足が目の前にあります。
現実に政府の想定する産業別労働力需給の見通しでは、医療、教育では増える予想ですが、建設業は大きく減り、2040年には運輸業よりも少なくなる見通しとなっています。大きな危機感を持って、迎えなければならない問題です。
というのも、建設業も大事な社会インフラの一環であると考えられるからです。たとえ大手の住宅メーカーであっても、結果的には地域の職人のチカラを頼っているに過ぎません。
人が住んでいるところがあれば、小学校に通い、医者にかかり、配送物が届く環境を作らなければならないことと同じように、その地域に建築の職人がいなければ、その地域の家や建築物を守り続けることはできません。地域の存続を維持するのには、地域の建設会社と建築職人は欠かせない存在であるはずなのです。
社会を支える職人のチカラを、もう少し詳しく見つめなおしてみましょう。