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ダイニング③

2023.12.01

おうちのはなし

・日本の食事の風景

 日本の伝統的な食事の場は、膳によるものです。基本的にはテーブルは用いず、各個人に分けて目の前に膳を置き、その中に食事が盛られます。風習として食事中の会話も禁じられていることを考えると、食事も修行の一種であり、その根底には禅があります。

 一方、多くの国では、食文化としてのマナーはあっても、食事そのものはコミュニケーションを大切にする時間と考えられています。それは隣国の中国でも同様であり、食卓はさまざまな話題を広げる卓台でもあります。これらを考えると、日本だけが特異な食文化を持っているように思えてきます。

 また欧米の住宅では、食卓のある空間をファミリールームとし、暖炉のある空間をリビングとするスタイルも一般的です。そして、このスタイルへの憧れとして、現代の日本のリビングが発生してきたと考えられます。

 わざわざファミリールームと呼ばなくても、ダイニングは家族が食事をすることで私たちも受け継ぐことはできます。しかし、西欧人の本来のリビングの暮らし方までは理解できていないのが現実のようです。西洋のリビングには暖炉があり、食文化とは離れた、この暖炉のある暮らしが、日本人の身についていないと考えられるのです。

 ところが日本には膳の食文化と同時に、囲炉裏の食文化もあります。日本人は単に暖をとるだけではなく、煙を家中に巡らし家を丈夫にし、さらに自在鉤を発明することによって、食事をする中心の場所として位置付けたのです。

 この囲炉裏の周りでは、昔話をして会話を楽しみ、食事をして、家族が集まっていました。じつは、もっともダイニングらしい使い方をしているのが日本の囲炉裏であると考えることができます。

 その食文化は引き継がれて、上質な炭を活かすことで、中世から火鉢や卓上コンロが発明されました。現代にカセット卓上コンロを生み出したのも、囲炉裏にあると考えても矛盾はありません。こうした食文化をベースとした日本の風景が、ダイニングの原点になっているように思えます。

 手軽な卓上コンロがあるので、今は囲炉裏の代わりにダイニングテーブルがあれば充分です。日本人の家族の中では、ダイニングテーブルのある場所がもっとも大事で伝統的な空間になっているのです。

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